ウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島 Isle of Dogs』を観に、エンシニータスにある古い映画館、La Paloma Theatreに行ってきました。
La Paloma Theatreとは
La Paloma Theatreは1928年にオープンした映画館で、アメリカ在住歴20年近い相方の話によれば、一時はサーフィン映画といえばここというくらい、サーフィン映画のメッカだったそう。サーフィン絡みのイベントもここでよく行われたものだ、と懐かしそうに語っていました。
今はインディペンデント系の映画や古い映画がよく上映されています。時々、アーティストのライブもやっているようです。
金曜日の夜。上映は8時25分からだったのですが、7時45分にはまだ窓口に人がいませんでした。8時10分に戻るとありましたが、つまり上映開始15分前にしか窓口が開かないということ。こののんびりさが好きです。
バーで時間つぶし
ちょうど小腹も減っていたので、お隣のアメリカンバー、D Street Bar & Grillで一杯やって時間つぶし。8時前はまだ明るくて人もまばらでしたが、8時を過ぎたら急に混んできました。
サンディエゴではこういうバーに、若いカップルや若者グループから家族かと思われるグループ、かなり年上のカップルまでいます。客層の雰囲気が必ずしも明確に限定されていないことが面白いなぁといつも感じます。
というのも、東京にいたときは、おしゃれなバーにはおしゃれな人が、ファミリーレストランにはファミリーが、というように、若い人と家族が行く店の間には目に見えない、しかし確実な壁があったように思うからです。ただ、湘南はそうでもなかったので、あえて「東京にいたときは」としました。「日本は…」と我々はつい言いがちですが。
ウェス・アンダーソンの世界が炸裂『犬ヶ島』
さて、La Paloma Theatre。中はこんな感じで、ノスタルジック。ほとんどの席のシートのカバーは破けていました。この環境で、『犬ヶ島 Isle of Dogs』は一人10ドル。この価格設定をどう感じるかはきっと人それぞれかなり異なるのではないでしょうか。
わたしの感想はもちろん「こんな雰囲気の中で大好きな映画監督の映画を10ドルで観られるとは安い」です。
ウェス・アンダーソンは、彼の初期の作品『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)で知って以来のファンです。そのウェス・アンダーソンの最新作『犬ヶ島 Isle of Dogs』はわたしの好きなウェス・アンダーソンの世界が炸裂していました。最高。
『犬ヶ島 Isle of Dogs』は日本が舞台で、登場人物はそれぞれ自分の国の言葉を話します。すなわち日本語も結構あり、映画の中の背景の看板なども日本語で描かれていて、そういう意味で日本語がわかる人には楽しみが二倍あると言えます。
わたしは日本語字幕や吹き替えでない、アメリカの人たちが観るバージョンで観たので、自分が理解を得た映画の物語の展開が、はたして日本語情報からのものなのか、英語情報からのものなのかがよくわからなくて、「もしかしたらバイリンガルの子どもの脳みそってこんな感じかな」と思うような不思議な感覚がありました。
途中で、ほとんどを日本語情報から得ているのではないかという錯覚に陥り、「こんなに日本語が多くて、日本語がわからない人にもちゃんとわかるのだろうか?」と自分に関係ない心配をしてしまったほど。ですが、当然のことながら、日本語がわからなくてもちゃんとその都度、物語の流れを観客が理解できるように作られているはず。だったら「日本語はわからない」という立場で観たらどんな見え方なんだろうということにも興味をそそられました。
強引にまとめに入りますと、La Paloma Theatre、かつて「ノスタルジックなミニシアター」の投稿でご紹介したCinema Under the Starsと近しい良さがありました。わたしはどうも最新で最先端のシネマコンプレックスよりもこういうものに惹かれる傾向があります。同じような傾向の人にはおすすめしたいところですが、はたしてこのような傾向の人はどのくらいいるもんなんでしょう?